自身の民族構成比や祖先のルーツがわかることで人気を博している遺伝子検査キット「GeneLife Haplo2.0 (ジーンライフ ハプロ2.0)」。大人気YouTubeチャンネル「Kevin's English Room」で取り上げらたことで更に多くの反響をいただくことができました。「GeneLife Haplo2.0」は国立遺伝学研究所との共同開発で誕生した自信作だけに、当社にとって望外の喜び。

そこで日本を代表する遺伝学者のひとりであり、同製品の開発パートナーである同研究所の斎藤成也特任教授をお招きし、その魅力と日本人のルーツについて語っていただきました。

国立遺伝学研究所 特任教授 斎藤成也先生

 

技術の進化が研究を推し進め、新たなことがどんどんわかってきている!

(ジェネシスヘルスケア 以降GHC)「GeneLife Haplo2.0」では母方のルーツだけでなく、父方のルーツも調べられるようになりました。これは研究が進んだ結果と聞いていますが、遺伝学的アプローチで日本人のルーツを探る研究は、いつごろからはじまったのでしょうか?

(斎藤教授)タンパク質を調べて日本人の起源をさぐる研究は1960年代から進められてきましたが、DNAを用いた研究は1980年代からはじまっています。ミトコンドリアDNA(ミトコンドリア内にあるDNA、母方由来のみ遺伝する)に始まって、Y染色体(性染色体のひとつ。男性個体ではX染色体と同時に存在し、女性個体には存在しない性染色体をY染色体という。女性にはY染色体が存在しないため、これを調べることはできない)も調べられました。今日ではゲノム全体で日本人の起源についての研究が現代人や古代人のDNAを用いて進んでいます。

GHC)研究が進んだ結果、遺伝学的にハプログループという集団で分類され、それを遡れば人類のルーツであるアフリカまで、祖先の経路を遡ることができる、というものですよね。「GeneLife Haplo2.0」を通じて自身のルーツを知ることで、誰もが悠久の歴史の主人公になることができます。

(斎藤教授)それはミトコンドリアDNAを調べた場合ですね。しかしミトコンドリアDNAだけでは解析できる情報に限りがあり、今日の技術ではある程度やり尽くされた感があります。その一方で、Y染色体および常染色体を用いたDNA解析は今まさに多くの研究が進んでおり、それらDNAの系統も詳細な広がりを見せています。

解析後、アプリ上で報告書を確認。

 

まず民族構成比率が報告される(内容はイメージです)。

 

次に母方、父方祖先のグループとその経路も。

 

GHC)なるほど!だから父方のルーツと母方のルーツのどちらも調べる必要があるのですね。当社のサービスも研究の進化に合わせてアップデートする余地がまだまだありそうです。「日本人はどこから来たのか」という話題について、先生の見解を教えていただけますか?

諸説ある日本人のルーツについて、押さえておくべき「二重構造モデル」

(斎藤教授)日本人のルーツを語るうえで重要なのは「二重構造モデル」という考え方です。埴原和郎( はにはら かずろう)が1991年に提唱しました。おおきくわけると、日本列島には遺伝的に異なる2種類の人々が異なる時期に渡来して混血したというものです。

最初のグループが日本列島に渡来したのは約4万年前、というのが学者の共通認識です。旧石器時代でした。4万年前以降の遺跡は日本各地で見つかっています。あいにく4万年前に渡来した当時のDNAはまだ見つかっていませんが、約8,000年前の日本で暮らしていた縄文人のDNAは見つかっており、そのほかにも多数の縄文時代人のゲノムDNAが調べられています。我々現代日本人にも縄文人のDNAが1割から2割程度受け継がれています。

一方「二重構造モデル」ではその後弥生時代になって、それまでの第一グループ(縄文人)とは遺伝的に異なる人々が大陸から渡来したとしています。それらの人々は日本列島の中央部にたくさん渡来して子孫を増やしたので、それ以外の、北海道のアイヌの人々と沖縄の人々は、縄文人のDNAをより多く受け継いでいることが知られています。つまり縄文人から受け継いだDNAは、北海道のアイヌと沖縄の人々において比率が高く、本州・四国・九州の本土人(ヤマト人)においては比率が低いのが特徴です。

GHC)なぜでしょうか?

(斎藤教授)大陸から渡ってきた第二の渡来人である弥生人の影響だと考えられます。

GHC)つまり弥生人が本土で急速に広がった結果ということですね?

(斎藤教授)その通りです。3,000年前に大陸から九州の北部に渡来し、稲作ともに西に広がっていったのです。ちなみに本州で最後に伝わったのが今の関東地方です。一方、沖縄に稲作が伝わったのは鎌倉時代、北海道に稲作が広がったのは明治時代です。

北海道ではアイヌ語で川や谷を表す名称、ナイやベツという名称が数多く残っています。例えば稚内や登別。これは東北地方にも同様にたくさん残っています。

つまりかつてはアイヌ語を話す人々が東北地方にもいた。ところが時の大和朝廷が東北地方に攻め入った結果、東北から北海道へ逃れたと考えられています。

Y染色体のハプログループDは、日本人、チベット人、アンダマン諸島人に多いグループですが、その中でもアイヌ人や沖縄人に多くみられ、本土(ヤマト人)で少ない。現代日本人男性の約20%はグループDに属す一方、現代の朝鮮や中国人にはほとんどいないのです。

GHC)大陸から弥生人が渡来し、日本の本州・四国・九州に定着し現代に至るイメージが湧きました。解析技術の向上によって研究が進み、より多くの歴史を自身のDNAからも知ることができる。現在も研究が進んでいて、その途中にあることですね。私個人のDNAから縄文人と弥生人のDNAがどれくらい受け継いでいるのか、分かる日もそう遠くなさそうです。本日は貴重なお話をありがとうございました。

■今回ご紹介した遺伝子検査キット

GeneLife Haplo2.0  価格14,900円(税込/送料無料)

 

Profile

斎藤成也(さいとう なるや)

遺伝学者。国立遺伝学研究所特任教授。著書に「最新DNA研究が解き明かす。日本人の誕生(秀和システム)」、「DNAから見た日本人(ちくま書房)」、「核DNA解析でたどる日本人の源流(河出書房新社)」など15冊以上執筆。その知見を活かし、ジェネシスヘルスケアとの協業プロジェクトとして、民族構成比や先祖のルーツがわかる遺伝子検査キット「GeneLife Haplo」シリーズの開発をご支援いただいている。